1.マイナンバーの導入主旨

平成25年5月31日、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」が公布されました。これにより、国民1人ひとりがマイナンバーを持つようになります。この、1人に1つの固有の番号のことを正式には「個人番号」と言います。マスコミなどで使われている「マイナンバー」は個人番号を親しみやすくするための呼称となっています。

さて、ではなぜ我が国に「番号制度」が必要なのでしょうか。さまざまな理由がありますが、まずは、高齢化による社会保険給付費の増大、少子化による労働力人口の減少、格差拡大に対する国民の不安といった社会経済情勢の変化があげられます。

また、日々進歩を続ける情報通信技術により番号制度を支える基盤が整いました。なお、現在の社会保障・税行政には次のような課題があり、これらを解決するために番号制度が必要となったのです。

国民が行政に対して感じること

  • 国民一人ひとりが公平・公正に扱われているのだろうか
  • 自分の納めた税金や保険料にふさわしい社会保障給付がきめ細やかに、かつ的確に行われているだろうか
  • 自分の権利がしっかりと守られ、そのことを自分の目で確認することができるだろうか

行政手続に関する問題点

  • 一つひとつの手続に重複した添付書類が求められるなど煩雑かつ不便でコストがかかる
  • 制度上利用できるサービスであってもそれを知らないためにみすみす受給の機会を逃してしまう
  • 行政が国民それぞれの実情にあったサービスを提供するための前提としての正確な本人確認ができないため真に手を差し伸べるべき者に対するセーフティネットの提供が万全ではない
  • 不正行為の防止や監視が必ずしも行き届かない
  • 国と地方の間、国の各府省間、地方公共団体間の情報の連携や、各行政機関・地方公共団体内部の業務間の情報の連携が不足しており、本来国民のサービスに振り向けられるべき財源や人的資源が重複する作業に浪費されている

これらの事態は、我が国において、複数の行政機関に存在し、かつそれぞれに蓄積される個人の情報が同一人の情報であるということの確認を行うための基盤が存在しないことが大きな要因となっています。

年金のように国民一人ひとりの情報が生涯を通じて「タテ」につながる必要性や、医療・介護など制度横断的に自己負担上限額を定める場合のように国民一人ひとりの情報が分野を超えて「ヨコ」につながる必要性が、マイナンバー制度なしには充足しないのです。

2.番号制度導入の目的と期待される効果

番号制度は、上記のような様々な課題を、最新の情報通信技術を使うことにより、完璧ではないものの少しでも緩和させようと導入されます。

そして、まずは制度の枠組みを超えて社会保障制度と税制を一体的に捉え、社会保障給付の効率性・透明性・公平性を高めようという観点から利用が始まります。すなわち、マイナンバー制度の目的は正確な本人確認を前提に、個人番号を活用して所得情報を把握し、それらの情報を社会保障給付や税の分野で効果的に活用します。

また、IT技術を使って効率的かつ安全に情報連携する仕組みを国・地方で共有し、協力しながら整備することにより、国民生活を支える社会基盤を構築していきます。

番号制度で何ができるようになるのか

番号制度は、将来的には幅広い分野での利用を視野に入れながらも、当面は社会保障と税、災害の3つの分野で活用します。大綱を読むと次のような活用を想定していることがわかります。

(1)よりきめ細やかな社会保障給付の実現
社会保障給付や負担の状況を、国・地方公共団体等相互で、正確かつ効率的にやり取りすることで、個人や世帯の状況に応じたきめ細やかな対応ができるようになります。
例:社会保障の各制度単位ではなく、家計全体をトータルに捉えて医療・介護・保育・障害に関する自己負担の合計に上限を設定する「総合合算制度(仮称)」を導入する。
(2)所得把握の精度が向上する
法令に基づき税務当局が行う国税・地方税の賦課・徴収に関する事務(申告書の処理、調査等)をする場合、個人番号と法人番号を活用することにより、所得情報や扶養情報を効率的に名寄せ・突合でき、正確な所得把握ができるようになります。
(3)災害時の活用
防災福祉の観点から、次のような取組が可能になります。
①災害時要支援者リストの作成および更新
要介護認定や障害等級等の情報など、分野横断的に援護の必要な人の情報を集約でき、各種個人情報に変更が生じた場合にも迅速なリスト更新が可能になる。
②災害時の本人確認
被災住民が避難所等で自己の4情報(氏名、住所、生年月日、性別)と番号を告知することにより、迅速に避難者リストが作成できる。
(4)自己の情報の入手や必要なお知らせ
国民が、社会保障・税に関する自分の情報や、利用するサービスに関する情報を自宅のパソコン等から閲覧できることにより、必要なサービスを受けやすくなる。
<想定される具体例>
・各種社会保険料の支払状況
・医療、介護、保育等のサービスを受けた際に支払った費用
・自分の過去の税務申告、納付履歴に関する情報
(5)事務・手続の簡素化、負担軽減に関するもの
国・地方公共団体間で、届出や申請に必要な情報を適宜やりとりすることにより、事務手続の簡素化が図られ、公務員の負担も軽減します。
①添付書類の削減
例えば、次のような手続には「所得証明」の添付が必要ですが、番号制度導入で省略が可能になります。
  • 国民年金の加給年金、振替加算及び障害基礎年金の申請
  • 健康保険法による高額医療・高額介護合算制度の申請
  • 児童扶養手当の支給申請など
②医療機関における保険資格の確認
医療機関において、オンラインでの医療保険資格の確認を可能とすることにより、レセプトへの資格情報の転記ミスや保険者の異動情報が確認できないことにより生じている医療費の過誤調整事務を軽減できる。
③法定調書の負担軽減
現在、国と地方にそれぞれ記載事項が共通な法定調書について、電子的な提出先を1か所とするなど、事業所の負担を軽減する。
(6)医療・介護サービスの質の向上に資する
個々人の心身の状況と提供された医療・介護サービス内容の情報を使って公的サービスの質を上げることができる。具体的には、以下のようなケースが考えられる。
  • 転居しても、継続的に健康診断情報・予防接種記録が確認できるようになる
  • 乳幼児健診履歴を継続的に把握することにより、幼児虐待の早期発見につながる
  • 地域がん登録において、患者の予後の追跡が容易になる

3.番号制度に必要な3つのしくみ

複数の行政機関に存在する個人や法人の情報が「同一人の情報である」ということの確認を行うための基盤を構築するには、以下の3つのしくみが必要になります。

(1)付番
新たな「番号」を最新の基本4情報(住所、氏名、生年月日、性別)と関連づけて付番するしくみです。
なお、「番号」は、所得の情報を把握し、それらの情報を社会保障や税の分野で効率的に活用するための番号であり、国民が行政機関の窓口で提示するものです。
したがって、①国民一人ひとりに1つの番号が付与されていること(悉皆性=1つ残らず全部)、②全員が唯一無二の番号を持つこと、③「民―民―官」の関係で利用すること、④目で見て確認できること、⑤最新の4情報と関連づけられていること、の5つの機能を併せもつものが求められます。
(2)情報連携
情報連携とは、複数の機関において、それぞれの機関ごとに「番号」やそれ以外の番号を付して管理している同一人の情報を紐付けし、紐付けられた情報を相互に活用するしくみをいいます。
情報連携においては、データベースを持つ機関が、他の機関の持つデータベースのうち特定の情報を必要とする際に、本人を一意に特定する何らかの識別子を介して新たに情報を取得します。
なお、この際連携される個人情報の種別や理由等を明確にするために、制度上、情報連携基盤の利用を義務付けます。
(3)本人確認
個人が「番号」を利用する際、利用者が「本人」であることを証明するためのしくみ(公的認証サービス)が必要です。
これは、対面での本人確認やオンライン上での本人認証に活用できるICカードが適しています。具体的には、券面に基本4情報と顔写真が掲載され、公的個人認証サービスを標準搭載し、「番号」をICチップに記録したものとし、現在の儒民基本台帳カードを改良したものとします。

4.マイナンバー法の全体像

1章総則(1条~6条)
目的、用語の定義、基本理念を定めている
2章個人番号(7条~16条)
個人番号の生成、通知等に加え、提供の制限や本人確認の措置など懸念(悪影響)を防ぐための基本的方策が規定されている
3章個人番号カード(17条・18条)
個人番号カードについて規定している
4章特定個人情報の提供(19条~25条)
個人番号により対象者が特定された情報を提供できる場合、提供する方法について規定している
5章特定個人情報の保護(26条~35条)
個人番号により対象者が特定された情報を保護するための方策を規定している
6章特定個人情報保護委員会(36条~57条)
個人番号により対象者が特定された情報を保護するために中心的な役割を担う特定個人情報保護委員会について規定している
7章法人番号(58条~61条)
法人番号について規定している
8章雑則(62条~66条)
事務の区分について規定している
9章罰則(67条~77条)
刑事罰について規定している
附則1条~6条
別表別表第1(9条関係)、別表第2(19条関係)